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1人読書会:「不安―ペナルティキックを受けるゴールキーパーの…」ペーター・ハントケ :翻訳本と時代性と著者写真の問題はあるが、よく分からないが嫌ではない1冊

BOOK
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「幸せではないが、もういい」という分からない作品が良かったペーター・ハントケ作品の2作目読了。
ドイツ・オーストリア圏の作家。
今回も分からなかった。
ストーリーらしきものは無く、淡々と進んでいき、昔の本だしサリンジャーとかカフカみたいな感じかなと読んでいると
いきなり人を殺してビビる。
そういうことね!ここからね!と期待して読み進めるが、その後話が動くかというと動かず、主人公はあちこち移動して人と接したりするがストーリー的には何もない。
章立ても無くただ続いていくので、少しずつ読む人には切れ目が無くてその点は読みにくい。
アマゾン/wikiの説明では「殺人者が次第に言葉や社会とのつながりを失っていく小説『ペナルティキックを受けるゴールキーパーの不安』(1970年)」とあったが
https://amzn.to/2zReCdQ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ペーター・ハントケ
全くそうは思わない。殺人をする前も後も彼は変わらないし、言葉や社会とのつながりを失っていきもしない。失っているとしたら最初から失っているし、むしろつながりは現代人より多い。
現代との比較で言うと、彼の社交性などの外面と彼の内面はリンクしていないように思うが、この時代はそれが普通で、現代は外面と内面をリンクさせている時代な気がした。もしくは現代は内面を正しく外面と差異が無いように言語化しないといけないというか。

表紙


写真とったら気持ち悪い感じになったが、枯れ葉の表紙。実物は悪くはない。
本の頭に著者の全身写真が載っており、なぜそれを巻頭に1ページ使って載せる必要があるのかが分からなかった。
wikiではインテリ・ハンサム扱いなようだが、ヨーロッパ人にはよく居そうな顔で悪くはないが、
そのそもこの全身写真は斜めから撮っており、長髪なこともあり顔は良く見えない。
スタイルも良いと言えば良いが、これがこの本の内容にどう関係するのだろうと、本を開いた直後に出てくるこの写真を見て考えた。
が、読み終えた後で考えても何の意味も関連性も無いように思う。なぜこの全身写真が1ページ必要だったのだろうか。まあいいけど。
気になるのは翻訳の文体。
最近の翻訳本は、読んでいても違和感を感じることはなく、原書を読まなくては、と思うことはほぼ無いのだが、
この本は久しぶりに「原書読まないと分からない」という思いになった。ドイツ語の原書とか読めないけど。
文体が固く、それは原作の雰囲気を生かしているのか、それとも翻訳段階でそうなったのかが分からない。
ドイツ語を知っていたら、構文が透けてみえそうな気もした。
女の人のしゃべり言葉も、すごくへりくだった過剰な丁寧さでそんな喋り方しないでしょ、と思うのだが、
考えてみると50年前の小説なのでその時代は違和感なかったのかもしれない。
というように、昔の翻訳は構文が透けて見えるのが気になり気が散るのと
(原文に忠実に訳していた時代から、日本語として違和感なく自然に訳する方向に変わっているのだと理解してる)、
会話文に時代性が出すぎていてそこに気を取られる。
これが100年前の話であれば古典物として読めるのかもしれないが、50年前だと古典というには新しく、現代ものというには古臭いのだろう。
あと、wikiを見ていると実験的な創作を続けてきている人のようだが
実験的な実験物って受け取る側に取っては意味がないというか。
少なくとも私は良いものが読みたいのだが「実験でやってみました」で読んでも意味が分からない場合、自分にとっては意味が無い。
アートでも、本人なりの本気が入っていればそれを見たいが、実験が主体だとなあ。
実験に付き合わされて損した感になってしまうというか。
私には実験のサポートをする余力は無いということか。
実験系を避けて通るか、でもこの本も悪くはなかったので
損したかも感ではなく、実験サポートしているパトロン感で読めばいいのか。
タイトルの「不安―ペナルティキックを受けるゴールキーパーの…」というのは
最後の方にゴールキーパーについて語る主人公の会話で出てきたが、本の終わりすぎるし、あまり意味は感じなかった。
主人公が元・ゴールキーパーなのは冒頭で説明されていたが、それもあまり意味は無かった。
つまりタイトルと物語はほとんど関連性がなかった。
そしてこの本が映像化されたものが、サッカーものと勘違いされてゴールデンタイムに放映されたエピソードをネットで読み
シュールで笑った。そんなん困るわ。
ゴールキーパーの不安 – Cafebleu Diary
https://www.cafebleu.net/blog/archives/2004/07/post-130.html
こちらも良かった:
1人読書会:「幸せではないが、もういい」ペーター ハントケ:何も分からないが、すごく良かった本。分からないが、それでいい。 https://wp.me/p69qyN-HN
2020/1/10追記:
ノーベル文学賞効果なのか新装出版されるよう。翻訳はそのまま。