1人読書会:「学びとは何か-〈探究人〉になるために」今井 むつみ:人間の脳が学習していく仕組みに納得

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「学びとは何か-〈探究人〉になるために」今井 むつみ
岩波書店 (2016/3/18)
地味なタイトルに読む気が起きなかったが読んでみたら恐ろしく面白かった。
もう少し万人が読みたくなるタイトルにしたらいいのに。。タイトルで損していると思う。読み始めるまでに無駄なエネルギーが必要だった。探求人とか、間違ってはないけどそれを目指そうと言われても面白くないよね。。
で本題。学びとはなにかという理屈をこね回す抽象的な話ではなく、認知科学的に脳がどう学習していくのかという話。
人はスキーマという学習像というかシステムを作り上げ、それに当てはめて予測したり学んでいくというのがベース。
スキーマを修正しながら精度を深く広く育てていくが、自己修正は簡単じゃないし、スキーマに合致しない情報はスルーしたりもするよ、と。
自分の頭の動きと照らし合わせて納得感があった。新しい情報を得ると既存の情報と比べたりして理解するし、スキーマにひっかからない情報は無意識にスルーしてるし、逆に一度認識した情報はその後もやたらと目に付いたり。
本書で特に衝撃だったのは、8か月までの幼児は例えばR/Lの音の区別が付く話。1歳になると出来なくなると。
それは日本語ではR/Lの違いは存在せず、認識する必要がないから。
要らないものは捨てて、必要な情報だけを拾う仕組みで効率良く出来ているんだなと。
どの言語圏の赤ん坊も生まれたときは音差の区別が付くそう。でも母国語に必要なものだけを残して後は捨てる。
忘却力も能力の一つと思うことがあるが、一層確信した笑
また、その道に秀でたトップの人ほど学習練習時間が長いという話は以前読んだアメリカの本(超一流になるのは才能か努力か?)でも同じ話が出ていて、何事にもまずは時間が必要だな。語学学習とか王道は無いとよく言われるが、まさにそれ。
そういえばこの数年語学系勉強会を開催していて気付くのは、出来る人ほどきっちり予習したりちゃんと勉強しているということ。(逆に出来ない人ほど、、、以下省略)
まさにその法則。
熟練者ほど全てを考えるのではなくパターンでパッと分かるというのは空手やダンスの習得でもそう思ってたので納得だった。というかそういうスキーマで読んでいたので、本にはそうは書いていなかったかもしれない笑
熟練者のその先に直感があるのだが、「直感」というのは何だろうかと思っていたが、パターン認識(という用語でいいのかは不明だが)の突き詰めた形が直感という理解。
よくマインドフルネス本で自分の直感、感覚を信じましょうという説明があり、何の根拠があって自分の直感を信じられるのだろうかと思っていたが、人間としての経験を積めば直感の精度が上がるから信じてよいということなんだろうか。音差の話のように、野生的な部分の直感はもしかして生まれた時からあるのかしら。この辺は本書とは直接関係のない話だが個人的に直感についてやや理解が進んだ。
今後の人間の脳について1つ疑問。
ネットが普及して細かい知識は暗記する必要が無くなって、ググれば良いと思っていたが、人類の長年の脳に叩き込むことで様々なことが高度に早く出来るようになるという仕組みにどう影響するのかしないのか。
スキーマや直感は自分の頭で記憶してこその動きのように思えたが、暗記なしでは機能しないのだろうか。
だとすると、ネットの恩恵をあまり受けずに今までの人間の範囲でしか突出した才能は出てこない気がする。
暗記はいつまでも必要なのか、それともネットが脳の外部記憶的に動く未来、人間の脳やスキーマがネットとセットで動く未来が来るんだろうか。
ネットと脳の関係とか研究たくさんありそう。興味あり。
ちなみに、知識というのは個別に完結した「知識」をペタペタと貼り付けて増やすようなイメージではないという説明としてケバブ型(ドネルケバブ・モデル)という言葉で説明していたが、ケバブって最初から大きい肉を焼いてそれを削ぎ切りしていくものだと思ってた。
もしかしてバームクーヘンみたいに薄いのを貼り付けて作るの?日本人には馴染みが薄くてイマイチな比喩だと思ったけど、私がケバブ好きじゃないからかしら。(あの匂いが苦手)
と、どうでもいい話で終わりますが非常に面白い本でした。
語学好きの方とか、学習好きの方、脳の動きに興味ある方なんかにおススメ。
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